売主を不利にする「囲い込み」、不動産会社の両手仲介の対策は?

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不動産売買の現場では、売主の不利益となる「囲い込み」が行われています。

囲い込みとは、不動産業者が仲介手数料を二重取りする「両手仲介」を目指すために、ほかの業者に物件を取り扱わせないようにする行為を指します。

これらは不動産業者の利益のためだけに行われるもので、売主にとっては何一つ利益がありません。

悪質な行為にも関わらず、現在の日本では取り締まる法律がないため、日常的に行われているのが現状です。

今回は、悪質な仲介業者が行う「囲い込み」や「両手仲介」について詳しく解説します。

囲い込みを見破るポイントや、囲い込みをされた場合の対処法にも触れますので、ぜひ参考にしてください。

目次

不動産を売るときの「囲い込み」とは

不動産を売却する際、依頼した仲介業者が意図的に物件情報を隠したり、積極的に宣伝を行わなかったりするケースがあります。

これは他の不動産業者に取り扱わせないようにする行為で、「囲い込み」と呼ばれています。

仲介手数料を二重取りする「両手仲介」が原因

SER不動産より画像引用

仲介業者が「囲い込み」をする理由は、自らの利益を増やすために、仲介手数料を二重取りする「両手仲介」を目指すからです。

もともと不動産売買の仲介には、「片手仲介」と「両手仲介」の2種類があります。

片手仲介とは、売主・買主の「片方」から仲介手数料を受け取ることで、両手仲介とは売主と買主の「両方」から仲介手数料を受け取ることです。

仲介手数料は宅地建物取引業法に基づいて、物件成約価格が400万円を超える場合は、「物件成約価格の3%+6万円」が上限と定められています。

3,000万円の物件を売買したケースを例に、片手仲介と両手仲介について考えてみましょう。

片手仲介の場合

売主は、所有物件を3,000万円で売却するため、A不動産に仲介を依頼しました。

B不動産の顧客である買主がこの物件を気に入り、売買契約が成立しました。

3,000万円の物件の仲介手数料は、「3,000万円×3%+6万円」で、96万円です。

A不動産は売主から96万円、B不動産は買主から96万円、それぞれ仲介手数料を受け取りました。

このケースは、A不動産は売主から、B不動産は買主から仲介手数料を受け取るので「片手仲介」にあたります。

両手仲介の場合

売主は、所有物件を3,000万円で売却するため、A不動産に仲介を依頼しました。

A不動産は自社の顧客にこの物件を紹介し、売買契約が成立しました。

仲介手数料は「3,000万円×3%+6万円」で、96万円です。

売主・買主ともA不動産の顧客であるため、A不動産は両方から96万円ずつ、合計192万円の仲介手数料を受け取りました。

このケースは、片手仲介と比べてA不動産に2倍の仲介手数料が入ります。

不動産業者からすると仲介手数料が多ければ多いほど利益が増えるため、両手仲介を行う業者が後を絶ちません。

海外では禁止されていることも

アメリカやシンガポールなどの海外では、両手仲介が法律で禁止されています。

なぜなら、売主と買主の利益は、一般的に相反すると考えられているからです。

簡単にいうと「できるだけ高く売りたい売主」と「できるだけ安く買いたい買主」の目指すゴールは正反対なので、一社の仲介業者が、同時にどちらともの味方にはつけないとされています。

しかし、日本では両手仲介を禁止する法律がまだないため、大手をはじめ多くの不動産業者が両手仲介を行っています。

法律で規制されていないため仕方がない一面もありますが、やはり売主からしたら不利になることが多いので、不当な囲い込みをされないように、常に仲介業者の行動はチェックしておきましょう。

もし首都圏や大都市に住んでいる場合なら、業界で唯一「SRE不動産」は、会社方針として「両手仲介を行わない」と明言しているので、相談してみるのもいいと思います。

(※ただしサービス対象地域が首都圏や大都市のみとなっています)

囲い込みされている可能性があるかをチェック

では、どうすれば囲い込みをされているのか確認できるのでしょうか?

チェックポイントを解説しますので、ぜひ参考にしてください。

相場価格で売りに出しているのに問い合わせがこない

相場価格で売り出しているのに、問い合わせがまったくこない場合、囲い込みをされている可能性が高いといえます。

たとえば、売主が依頼したA不動産が囲い込みをしたとします。

A不動産は物件情報を他社に流さずに、買主探しに必死です。

どこかで情報を得たB不動産から「購入したい」と問い合わせがきても、「交渉中なので紹介できません」などと断ってしまいます。

このように、相場価格で売り出しているのにも関わらず、問い合わせがまったくこないのは不自然です。

仲介業者へ進捗状況の報告を求めて、探りを入れましょう。

仲介業者と契約した直後に「安値」での買い付けが入った

仲介業者と契約した直後に買い付けが入った場合、買主は業者がもともと持っていた「顧客リストの中の一人」である可能性がとても高いです。

ましてや「安値」を付けてきたのですから、良心的な不動産業者なら、売主のためにほかの買主を探すはずです。

しかし囲い込みをする業者は、自社の顧客に早々と売って、両手仲介を成立させようとします。

たとえば3,500万円で売却希望の売主に対して、自社顧客の買主が3,000万円までしか予算がないとします。

「3,000万円ですぐにでも購入したいというお客さまがいます。このお客さまを逃すと、次の購入希望者はなかなか現れないかもしれません。すぐに売却する方が売主様にとってもメリットですよ!」

などと、売主を不必要に焦らせたり急かしたりします。

確かに、早く売却できるのは売主にとってメリットです。

しかし、希望価格よりも安値での買い付けは大きなデメリットになるため、囲い込みの可能性も踏まえて慎重に判断しましょう。

売り出してしばらく経つのにレインズに掲載されない

物件を売りに出してから、しばらく経ってもレインズに掲載されない場合は、囲い込みを疑いましょう。

レインズとは「不動産物件情報を交換するためのネットワークシステム」で、媒介契約の種類によって、掲載の義務が分かれています。

一般媒介:義務なし
専任媒介:義務あり(7日以内)
専属専任媒介:義務あり(5日以内)

よほどの好立地や築浅物件でない限り、多くの物件は専任媒介だと考えられるため、レインズに掲載されるはずです。

それにも関わらず、売り出してからしばらく経ってもレインズに掲載されない場合には、囲い込みに注意しましょう。

レインズは基本的には不動産業者しかアクセスできませんが、売主は自身の物件に限り閲覧できます。

売り出してから1週間程度経ったら確認し、もしも掲載されていない場合には、仲介業者へ状況を詳しく聞いてみましょう。

囲い込みに対するレインズの規制

レインズに掲載せず自社の顧客に個別に紹介したり、自社のホームページだけに掲載したりする囲い込みは、大手不動産業者でも日常的に行われています。

よく「会員さまだけに非公開物件紹介します!」「当社限定物件!」などのうたい文句を見かけますが、これらはほかの不動産業者からの問い合わせを受けないための囲い込みの可能性がとても高いです。

しかし専任媒介の場合、レインズへの掲載は義務付けられているので、掲載を怠ると宅建業法違反にあたる可能性があります。

レインズ側も公正な不動産流通を目指して運用規定が改正されていて、2013年10月には「正当な事由のない紹介拒否行為の禁止」と定められました。

2016年1月には取引状況の記載が義務付けられ、「公開中」「書面による購入申込あり」「売主都合で一次紹介停止中」の3種類で物件の状況がわかるようになっています。

レインズについては「レインズに登録しない不動産業者は悪質か?売買時の使い方と確認方法」の記事で詳しく解説しているため、興味がある人はご確認下さい。

悪質な囲い込みと法的責任

では、実際にあった悪徳な不動産業者の実例とともに、囲い込みと法的責任についてみていきましょう。

悪徳不動産業者の囲い込み実例

売主のAさんは所有マンションを売りに出すために、仲介業者を探していたところ、M不動産が相場の3,000万円よりも高い3,500万円の値をつけてきました。

「Aさんの物件なら3,500万円で売れると思います!ぜひ当社にお任せください!」と担当者は意気揚々。

少しでも高く売れるならAさんにとってはうれしいことなので、専任媒介契約を結びました。

M不動産と媒介契約後、すぐに内覧の申し込みがきたとの連絡をもらったAさん。

担当者と内覧の対応をしましたが契約は決まらず、その後内覧の申し込みはぱたりと途絶えました。

実は、最初の内覧者はM不動産が用意したダミーで、3,500万円でも売れる可能性をAさんに感じさせるためのフェイクだったのです。

M不動産はレインズに掲載せず、ほかの不動産業者からの問い合わせにも「申し込みが入りました」などと理由をつけ断り続けます。

内覧の申し込みがなくなって、Aさんは次第に不安を覚えます。

M不動産の担当者は「全力を尽くしていますが、現状内覧希望の問い合わせもありません。価格を見直しませんか?」などと提案してきました。

その間もほかの不動産業者からの問い合わせを断り続け、物件価格を相場の3,000万円まで値下げしたタイミングで、M不動産が自ら探してきた買主に紹介し、売買契約が成立しました。

M不動産はまずは媒介契約を獲得するために、相場よりも高い物件価格を提示。さらに囲い込みをして、Aさんの売却機会を故意に損失させたのです。

結果、M不動産は両手仲介に成功して、2倍の利益を手に入れました。

囲い込みは法的責任を問われる?

現状、日本には両手仲介を禁止する法律はありません。

しかし、上記のM不動産のような悪質な不正行為は、内容次第では法的責任に問われる可能性があります。

・詐欺罪  依頼者(売主)をだます行為
・背任罪  任務を背いて依頼者(売主)に損害を与える行為

ケースによって罪名は違ってくるでしょうが、どちらにしても依頼者にとって不利益となる行為をしている場合には、不動産業者の法的責任も出てくるのです。

不動産業者の利益追求のためだけに行われる悪質な囲い込みには、売主も強い姿勢で立ち向かうことが大切だといえるでしょう。

囲い込みされている場合の対処方法

売主にとってデメリットばかりの「囲い込み」。

実際に囲い込みされてしまった場合には、次の対処法を取りましょう。

すぐに仲介業者を変更するのがベスト

囲い込みだと判断したときは、すぐに仲介業者を変更しましょう。仲介契約は、双方の合意があれば即時解約できます。

もし業者が解約に応じなくても、焦る必要はありません。

仲介契約の有効期間は原則「3ヶ月」なので、契約が切れるまで待ちましょう。

囲い込みだと言い切れないけれど、不信感がある場合には、仲介業者としっかり話し合うことも大切です。

疑問や不安が解消されて、囲い込みの心配がなくなれば引き続き依頼し、そうでなければ契約を解消することをおすすめします。

囲い込みをしない仲介業者を探す

さまざまな業者を比較しながら、囲い込みをしない仲介業者を探しましょう。

都心部に住んでいるのなら、囲い込みの心配がない「SRE不動産」がおすすめです。

SRE不動産は、ソニーグループが運営する不動産サービスで、以下の特徴を掲げています。

  • 両手仲介をしない
  • 囲い込みをしない
  • 物件情報を広く流通させる

SRE不動産は囲い込みの心配がない上、物件情報を広く流してくれるため、購入検討者の目に触れる機会が増えます。

その分、売却の可能性も増えるので、売主にとってはとてもメリットが大きいです。

ただしサービスエリアが限定されているのがネックで、2022年6月現在は、東京都・千葉県・埼玉県・神奈川県・大阪府・兵庫県・京都府・奈良県のみとなります。

エリア内に住んでいる人は、ぜひ検討してみましょう。

信頼できる業者がいない場合は「一般媒介」も検討

調べてみても信頼できる仲介業者がいない場合には、専任媒介ではなく、一般媒介も検討してみましょう。

成果報酬で動く不動産業者にとって、一般媒介は仲介手数料を得られる確率が下がるため、あまりやる気の出る契約ではありません。

しかし一般媒介には、市場の反応が見られるメリットがあります。

広く物件情報を流して市場の反応を見つつ、その過程で信頼できる業者がいれば、専任媒介に切り替えるのもよいでしょう。

よくある質問

両手仲介についてよくある質問をまとめました。

不動産業者選びの参考にしてみてください。

大手の不動産会社なら安心できるの?

大手の不動産会社だからといって、両手仲介の心配がないわけではありません。

下記の表は、公的財団法人不動産流通促進センターが公表している不動産流通データ(2018〜2020年)をもとに、大手不動産会社の「両手率」を独自にまとめたものです。

会社名片手件数両手件数両手率
三井不動産リアルティネットワーク44,04280,96765%
住友不動産販売28,35584,06175%
東急リバブル36,34340,07452%
野村不動産グループ17,1469,85236%
三菱UFJ不動産販売10,4585,99736%
三井住友 トラスト不動産14,4749,02338%
みずほ不動産販売8,4533,95232%
大京穴吹不動産10,28612,40355%
大成有楽不動産販売 グループ7,3464,83540%
大和ハウスグループ9,5031,96917%
住友林業ホームサービス6,1146,67652%
スターツグループ3,3943,50551%
近鉄不動産3,3679,22273%
東宝ハウスグループ5,8677,94058%
日本土地建物販売931949%
東京建物不動産販売2,9391124%
長谷工リアルエステート4,1761,88031%
ポラスグループ ・中央住宅2,5094,40664%
小田急不動産21201,84046%
ナイス175438618%
朝日住宅1,6701,30944%
京王不動産1,10996547%
相鉄不動産販売5841,35670%
京急不動産87640832%
センチュリー21 グループ33,76245,44157%
大手不動産会社両手率

この表の「両手率」が高いほど、両手仲介を多く行なっているといえます。

しかし、もともと大手の不動産会社は、「売主」「買主」ともに多くの顧客を抱えているので、中小規模の不動産会社と比べて両手率が高くなるのは、ある程度は仕方がないともいえるでしょう。

あくまでも参考データとして、比較材料の一つにしてください。

両手仲介するところはすべて悪質業者?

「両手仲介=悪質業者」とは言い切れません。

たとえば、売主が依頼したA不動産の顧客の中に、条件がぴったり合う物件を探している買主がいたとします。物件価格の値下げも必要なく、即時購入希望の買主です。

この場合、売主・買主どちらにとってもメリットが大きいため、A不動産は売主と買主を引き合わせるでしょう。

このように、結果として両手仲介になるケースもゼロではありません。

ただし、基本的には「高く売りたい売主」と「安く買いたい買主」の利益をどちらも追求するのは難しいため、片手仲介を基本とする優良な不動産業者選びが重要です。

まとめ

仲介手数料を二重取りする「両手仲介」。悪質な不動産業者は売主の不利益になる「囲い込み」をして、自社の利益だけを追求します。

売主が損をしないためには、依頼した仲介業者の動きをこまめにチェックするのが効果的です。

もしも、囲い込みをされていると判断した場合は、遠慮することなく仲介業者を変更しましょう。

囲い込みをしない業者を見極めるのは簡単ではありませんが、多くの仲介業者を比較しながら、理想的な不動産売買を目指しましょう。

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