細長い路地部分の先にまとまった敷地がある「旗竿地」は、とくに都市部でよく見かけるタイプの土地です。
周辺の相場より安く販売されていることが多く、価格の安さから購入を検討する人も多いでしょう。
しかし、旗竿地に家を建てるときには注意点も多く、事前に把握しておかなければ後悔してしまうかもしれません。
そこで今回は、旗竿地に新築・建て替えする際の注意点や間取り例、旗竿地におすすめのハウスメーカーについて解説します。
さまざまな問題を事前に想定して、満足度の高い住まいを手に入れましょう。
旗竿地とは?どんな土地が当てはまるの?
旗竿地とは、道路に接する路地部分が細長く、その奥にまとまった敷地がある土地のこと。
旗を竿につけたような形から、「旗竿地」「旗竿敷地」などと呼ばれています。
四角くて平らな土地を「整形地」というのに対して、旗竿地や三角形・五角形などの土地・高低差のある土地などは「不整形地」に分類されます。
価格が相場よりも安い
旗竿地の大きなメリットは、相場よりも価格が安いこと。
同じ広さの整形地と比べると2割ほど安いケースが多く、リーズナブルに購入できます。
土地代が安くなればその分建物代に回せたり、全体の予算を抑えたりできるのも、旗竿地ならではの魅力といえるでしょう。
静かに暮らせる
旗竿地は道路から奥まった部分に家を建てるため、静かな環境で暮らせるのもメリットです。
家の目の前を車が通ったり人が歩いたりすることもないので、プライバシーを守りやすいといえます。
騒音や排気ガスが気になりにくいのも、嬉しいポイントですね。
また小さな子どもがいる家庭の場合、玄関から道路に飛び出して事故や怪我につながるケースもあるので、道路から少し距離のある旗竿地だと安心して暮らせるでしょう。
日当たりや風通しが悪い場合もある
一方旗竿地は、日当たりや風通しが悪い傾向にあります。
道路から奥まった土地なので、周囲を建物に囲まれるケースが多く、道路に面している土地よりも採光や通風が得られにくいのです。
ただし、設計や間取りの工夫で解決できることも多いので、旗竿地のプランニングを得意とするハウスメーカーに相談しましょう。
旗竿地に新しく家を建てる際の注意点
旗竿地を購入して家を新築する場合には、いくつかの注意点があります。事前に把握したうえで、土地の購入を検討しましょう。
建築費が高くなりやすい
旗竿地は整形地に家を建てるよりも、建築費が高くなりやすいです。
道路に面している路地部分が狭いので、工事の際に大きな重機が入れないケースが少なくありません。
重機が入れないとその分職人の作業が増えることになり、多くの人件費がかかってしまうのです。
どのくらい高くなるのかは、路地部分の幅の広さなどによってさまざまです。
「相場よりも安いから旗竿地を買ったけれど、建築コストを含めると割高になってしまった…」という失敗を防ぐためにも、土地を購入する前に住宅会社に相談するのが大切です。
間取りや設計に工夫が必要
日当たりや風通しが悪くなりやすい旗竿地は、間取りに工夫が必要です。
たとえば、リビングを2階に設ける・吹き抜けや中庭をつくる・高窓や地窓を効果的に取り入れるなどのアイデアがあります。
また旗竿地で家を建てる場合には、不整形地や狭小地などを得意とするハウスメーカー・工務店に依頼するのも重要です。
旗竿地での問題や注意点などを熟知したうえで設計してもらうのが、満足度の高い暮らしにつながるでしょう。
この記事では旗竿地でおすすめのハウスメーカーも紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
間口が狭いと車を出し入れしにくい
旗竿地の場合、道路に面している路地部分を駐車スペースとして活用するプランが多いです。
しかし2台止める場合は縦列駐車となるため、車の出し入れはしにくくなります。
また、路地の幅は建築基準法で「2m以上でなければならない」という決まりがありますが、2mだと車種が限られたり、乗り降りするスペースが確保できなかったりするかもしれません。
旗竿地を購入する場合は路地の幅をしっかりと確認し、車種や家族の人数などのライフプランも考慮するのが大切です。
売却しにくい可能性もある
価格の安さに惹かれて旗竿地を購入する人も多いですが、価格が安い=整形地よりも売れにくいことを示しています。
マイホームを購入しても、さまざまな理由で手放すケースも少なくないので、将来的なリスクも理解しておかなければなりません。
少しでもリスクを軽減するためには、売れやすい旗竿地なのかどうかを見極めることも大切です。
たとえば「路地部分の幅が広い(重機が入る余裕がある)」「日当たりや風通しがよい」などの旗竿地は、売れる可能性が高まります。
建てるときだけでなく将来のことまで考えて、旗竿地を購入すべきか・購入するならどのような旗竿地がよいかをじっくり検討しましょう。
旗竿地にある家を建て替える際の注意点
次はすでに旗竿地に家を持っていて、建て替えをする際の注意点を解説します。
接道義務を満たしているか確認する
現行の建築基準法では、住宅などの建築物を建てる場合「幅員4m以上の道路に、敷地の間口は2m以上接していなければならない」という決まりがあります。
つまり以下の図のように、旗竿地の路地部分が道路に2m以上接していなければなりません。
建て替え予定地がこの基準をクリアしていれば建て替えられますが、もしクリアしていない場合は建て替えが難しくなります。
ただし基準をクリアしていない場合には、以下のような対処法があります。
隣接している土地を購入する
隣接している土地が販売されている場合は、土地を購入して敷地を広げ、再建築基準を満たす方法が考えられます。
隣接地をすべて購入すると土地代の負担も大きいので、必要な分だけ購入できればベストです。
長年空き地になっているような場合は、交渉しやすいでしょう。
フルリノベーションする
土地を買い足す方法を紹介しましたが、必要なタイミングで必要な分だけ購入できる可能性はそう高くはありません。
隣接地に家が建っていてどうしても購入できない場合は、建て替えではなくフルリノベーションを検討してみましょう。
フルリノベーションは内装・外壁などをすべて取り壊し、建物を骨組みの状態にまで解体して、新たにつくりかえる方法です。
建て替えのように再建築の許可が必要ないので、建築基準法をクリアしていなくても問題ありません。
基礎の状態にもよりますが、建て替えよりも低コストでできるうえ、まるで新築のような仕上がりを目指せます。
土地を買い足すのが難しい場合は、フルリノベーションも視野に入れて検討してみましょう。
建て替え費用が高くなる
旗竿地での建て替えは、新築の場合と同じくコストが割高になります。
路地部分が狭いと重機が入れず、職人の作業量が増えて人件費が高額になるからです。
また建て替えの場合は、解体作業も発生します。
重機が入らず手作業での解体となれば、一般的な解体費用の2〜3倍かかるケースも少なくありません。
小型の重機を持っている会社なら手作業よりも費用を抑えられるので、なるべく多くの住宅会社に見積もりを出してもらい、比較検討しましょう。
工期が長くなる
路地部分が狭く重機が入らない旗竿地の場合は、手作業が増える分工事期間も長くなります。
工事期間が長くなればなるほど人件費はかさみますし、仮住まいの家賃も多くかかってしまいます。
住宅会社とよく相談して、工期がなるべく短く済む方法で建て替えを検討しましょう。
近隣住民とトラブルになりやすい
旗竿地の建て替え工事中は、近隣住民とトラブルになりやすいので注意が必要です。
四方を住宅に囲まれているケースが多いので、工事中は業者がお隣の土地を一時的に通らせてもらうケースも少なくありません。
また整形地と比べて解体にも再建築にも時間がかかるので、その分騒音で迷惑をかける時間も長くなってしまうのです。
トラブルを最小限に抑えるためには、工事が始まる前に必ず挨拶回りをし、トラブルや苦情などは直接家主に連絡してほしいと伝えましょう。
クレーム対応を業者任せにしてしまうと、自分たちの耳に入る頃には問題が大きくなりすぎているかもしれません。
建て替え後もその土地で暮らしていくことを考え、近隣住民への配慮を抜かりなく行うのが大切です。
旗竿地の家はどんな間取りになるの?
ここでは、旗竿地に建てた家の間取り例を紹介します。
旗竿地ではどのような暮らし方ができるかを、具体的にイメージしてみましょう。
旗竿地でも家中が明るい34坪の3階建て
周囲を建物に囲まれた敷地面積28坪・延床面積34坪の4LDKです。
太陽光をたっぷり得られるようLDKを2階に配置して、仕切りのない大空間を実現しています。
3階には、将来的に2部屋に分けられるよう設計された子ども部屋と、主寝室を配置。
1階はお風呂・洗面脱衣所・ファミリークローゼットが1列に並んでいて、家事動線のよい間取りです。
ただし、ファミリークローゼットに窓がなく、風通しの問題が少し気になります。
窓を設置しない場合は換気扇を設置したり、除湿機などで湿度の調節をしたりなどの工夫が必要になるでしょう。
旗竿地では庭のスペースを確保できない場合も多いですが、子どもが遊べるくらい広々とした玄関土間を採用しているのは素敵なアイデアだと思います。
大きな吹き抜けを採用した旗竿地の2階建て
敷地面積49坪・延床面積35坪に建つ、2階建ての3LDKです。
旗竿地では採光の問題で2階にLDKを配置するプランが多いですが、こちらの間取りは大きな吹き抜けを採用することで1階のLDKを実現しています。
LDK横の和室も引き戸を開放すると吹き抜けから光が入るので、1階全体が明るい空間です。
また、日当たりのよい2階のホールを広めに取っているので、家族のくつろぎスペースとして多目的に使えそうです。
気になるポイントは、家の全方角に窓があること。
日当たりや風通しのよさを確保できるのはメリットですが、周りをすべて住宅に囲まれている家なので、隣の家からの視線が気になる場面もあるかもしれません。
窓ガラスの種類や、カーテン選びなどの工夫は必要でしょう。
家の真ん中にテラスがある開放的な旗竿地の2LDK
敷地面積27坪・延床面積26坪の狭小旗竿地に建てた、2LDKの家です。
全方向を隣家に囲まれていますが、間取りの真ん中にオープンテラスを配置し、採光を確保しています。
2階は最大高さ3.8mの勾配天井になっていて、大きな天窓からも太陽光が差し込み、とても明るくて開放的なLDKです。
1階は周囲の視線が気にならないよう、地窓やすりガラスのスリット窓を採用するのは効果的ですが、1番広い居室の日当たりは不十分だと感じます。
とはいえ寝室として活用するのであれば、大きな問題にはならないかもしれません。
おすすめのハウスメーカーは?
ここでは、旗竿地に家を建てるときにおすすめのハウスメーカーを紹介します。
住友林業
住友林業は、木造住宅の建築に定評があるハウスメーカーです。
日本の国土の約900分の1に相当する山林を保有していて、大規模な林業をバックグラウンドに数多くの木造住宅を建てています。
路地部分が狭く重機が入らない旗竿地では、鉄骨造や鉄筋コンクリート造の家を建てるのは難しく、木造住宅に限定されるケースが少なくありません。
住友林業なら木造住宅の実績が豊富で、旗竿地の形状を最大限活かしたプランを提案してくれるので、安心して任せられるでしょう。
ダイワハウス
ダイワハウスは、2階にリビングを設ける間取りが得意なハウスメーカーです。
旗竿地は周りを建物で囲まれるケースが多いので、2階にLDKを配置するプランニングが重要となります。
都市部の狭小地での建築実績も多く、日当たりや風通し・プライバシーの問題などを解決するアイデアをたくさん持っています。
吹き抜けや屋上庭園の設計も得意なので、旗竿地に家を建てる際はぜひ相談したいハウスメーカーです。
クレバリーホーム
クレバリーホームは狭小地や変形地など、さまざまな土地に対応するのが得意なハウスメーカーです。
隣の家との間隔が狭い都市部ならではの問題を解決して、土地の特性に最適なプランを提案してくれます。
旗竿地はデッドスペースができやすいのも難点ですが、クレバリーホームは10cmのスペースもムダにしない設計力と空間の活用アイデアがあるので、満足度の高い家が建てられると思います。
よくある質問
旗竿地について、よくある質問をまとめました。旗竿地の購入を検討している人は参考にしてください。
旗竿地は固定資産税が安いって本当?
不整形地に分類される旗竿地は、整形地よりも土地の評価が低い場合が多く、その分固定資産税も安い傾向にあります。
どのくらい安くなるかはケースバイケースなので一概にはいえませんが、2〜3割ほど安く抑えられるかもしれません。
ただし、土地の評価が低い=売却しにくい土地なので、将来のライフプランも考慮して購入するかどうかを慎重に検討しましょう。
鉄骨造の家は建てられる?
一言で旗竿地といっても、路地部分の幅は土地によってさまざまです。
重機が入るくらいの広さがあれば、旗竿地に鉄骨造の家を建てることもできます。
しかし実際には、重機が入らないくらい狭い場合が多いので、旗竿地には木造住宅のほうが多く建てられています。
建築基準法だけを守ればいいの?
住宅などの建築物を建てる場合は、建築基準法により「幅員4m以上の道路に、敷地の間口は2m以上接していなければならない」という決まりがあります。
基本的には建築基準法が重要視されるのですが、自治体によっては独自の規制や条例を定めている場合もあります。
たとえば東京都の場合、建築安全条例で以下のような決まりがあります。
- 路地部分が20m以下の場合、2m以上道路と接していなければならない
- 路地部分が20m以上の場合、3m以上道路と接していなければならない
地元のハウスメーカーや工務店であれば、独自の条例も把握しているはずなので、まずは相談してみましょう。
住宅会社選びに迷っていて、具体的な質問をするのに抵抗がある場合は、役所の建築指導課に問い合わせるのがおすすめです。
まとめ
今回は、旗竿地に家を建てる際の注意点や間取り例などを解説しました。
旗竿地は価格の安さや静かに暮らせるなどのメリットがある一方、日当たりや風通しが悪くなりやすいなどのデメリットもあります。
デメリットは設計や間取りの工夫で解決できる場合が多いので、旗竿地が得意なハウスメーカー・工務店を見つけて依頼することがとても重要です。
またどうしても建築費が高くなりやすいので、堅実な資金計画を立てたうえで、複数の住宅会社を比較することをおすすめします。