不動産の売却時、一般媒介と専任媒介ならどちらが有利?違いを解説

マンションの売却を不動産会社に依頼するとき、不動産会社と「媒介契約」を結ばなければなりません。

媒介契約には複数の種類があり、その中でも選ばれることが多いのが「一般媒介」と「専任媒介」で、それに「専属専任媒介」を合わせた3つの種類があります。

今回は各媒介契約の特徴と、どんな時に適しているかを詳しく解説したいと思います。

目次

一般媒介と専任媒介の違いとは?

媒介契約を締結する際、8割~9割の人が「一般媒介」か「専任媒介」を選びます。

それぞれの特徴については、このあと詳しく説明していきますが、一般媒介と専任媒介の一番の違いは依頼できる不動産会社の数です。

同時に複数の不動産会社に売却を依頼したいのであれば「一般媒介」

1社に絞ってマンション売却を依頼したいのであれば「専任媒介」を選ぶと良いでしょう。

媒介契約には3つの種類がある

媒介契約は「一般媒介」「専任媒介」「専属専任媒介」という3つの種類があります。

それぞれの特徴は以下のようになっています。

一般媒介専任媒介専属専任媒介
複数の業者へ同時依頼できるできないできない
レインズへの登録義務義務なし7日以内5日以内
自分で買主を見つけるできるできるできない
売主への状況報告義務義務なし2週に1回以上1週に1回以上
契約の有効期間特になし3ヶ月3ヶ月

この3つの契約内容を簡単にまとめるなら、以下のような特徴があります。

一般媒介同時に複数の仲介業者にマンション売却を依頼できる
専任媒介3つの契約の中でバランスが良く、多くの人に選ばれている
専属専任媒介業者側が一番望む契約だが、業者に有利な内容が含まれている

それぞれの内容については、このあと詳しく解説していきます。

一般媒介にはレインズの登録義務がない

一般媒介と専任媒介における一番の違いは、やはりレインズへの登録義務です。

レインズとは
国土交通大臣から指定を受けた、不動産流通機構が運営している不動産業者専用のネットワーク情報システムです

レインズに物件登録することで全国の不動産売買物件の情報が閲覧可能となりますが、レインズを利用できるのは不動産業者に限られており、一般の人が閲覧することはできません。

基本的に不動産業者はレインズを通して他社の物件を探しているので、一般媒介のようにレインズへの登録義務がないのはマンション売却において大きなマイナス要素となります。

ただし、登録の義務がないというだけで、レインズに登録ができない訳ではありませんので、多くの仲介業者は一般媒介契約であってもレインズへの登録は行っているケースが多いというのが実情です。

媒介契約の種類によって仲介手数料に違いはあるのか?

媒介契約によって仲介手数料に違いはありません。

一般媒介でも専任媒介でも支払う仲介手数料の額は同じです。

ただし、不動産会社や仲介業者によって仲介手数料の額に違いはあります。

仲介手数料の金額は法律によって上限が決められているだけなので、上限よりも低い金額であれば業者側が自由に設定することができます。

2,000万円の中古マンションの売買であれば、上限は「売買金額の3%+6万円+消費税」なので726,000円です。

例えばA不動産は仲介手数料50%OFFというキャンペンを実施していた場合、726,000円の50%なので363,000円という場合もあるのです。

ですので、仲介手数料は媒介契約の種類というより、そのお店の料金設定による違いがあると考えるのが良いでしょう。

一般媒介のメリット・デメリット

一般媒介の主なメリットは以下です。

・業者選びの失敗リスクが低い
・物件情報をあまり公にすることなく売却活動できる
・いつでも媒介契約を解除できる

同時に複数の仲介会社に売却依頼できることで、業者選びの失敗リスクを軽減することができますし、一般媒介の場合はいつでも自由に契約を解除することができます。

まずは気になる数社の仲介業者に一般媒介で依頼しておき、その中から信頼できる仲介業者がみつかったら専任媒介や専属専任媒介へ切り替えるというのも一般媒介だからこそできることです。

また、レインズに登録義務がないことで、あまり売却していることを公にしたくない場合は、業者にレインズへの登録をしないように伝えておくなど、販売活動を調整することができます。

一方で、一般媒介の主なデメリットは以下となります。

・仲介業者のモチベーションが上がりづらい
・宣伝広告の規模が小さくなりがち
・販売活動の内容を把握しづらい

他店との競合になることで業者側としては大々的な販売活動に踏み切れないことも多く、結果として宣伝広告を縮小されたり、営業マンの中でも優先順位が下がってしまう恐れがあります。

さらに他の媒介契約とは違い、活動内容の報告義務がありませんので売却への戦略を立てづらくなるのも事実です。

仲介業者からは好まれない契約方法

一般媒介の特徴は同時に複数の不動産会社に売却の依頼ができる点です。

売主からすればこれを大きなメリットと感じるかもしれませんが、業者側にしたら売却に対するモチベーションが上がりづらいというデメリットであることも理解しておかなければなりません。

自社で宣伝費をかけても他社が先に買主を見つけてしまえば、それまでに使った宣伝費は無駄になってしまうからです。

どんな物件を売るのに適しているのか?

一般媒介契約が向いているのは、築浅や駅近くの人気物件です。

築浅マンションや駅近など、好条件のマンションであれば一般媒介で多くの人の目に止めてもらうことで早期売却へと繋がります。

このような人気物件だと業者側もあまり宣伝費をかけてアピールすることなく売れる可能性が高いので、一般媒介でも十分に期待することができます。

専任媒介のメリット・デメリット

専任媒介の主なメリットは以下です。

・バランスが良く人気の媒介契約
・自分で買主を探すことができる
・窓口を一本化できる

専任媒介契約を選ぶと、売却仲介を依頼できるのは1社のみです。

他の仲介業者に依頼したい場合は、現在の媒介契約が期間満了になるのを待つか、途中解除の手続きをしなければならないので、一般媒介よりも慎重に選ぶ必要があります。

その代わり仲介業者は他社にお客さんを付けられる心配がなくなるので、売却活動にも積極的に取り組んでくれるというメリットがあります。

またレインズへの登録義務や売主への定期的な進捗状況の報告義務が発生するので、早期売却や活動内容をしっかり把握することができますし、連絡窓口を一本化することで情報を整理しやすくなります。

このように非常にバランスの取れた契約内容になっていることから、多くの人はこちらの専任媒介契約を選ぶことが多いです。

一方で、専任媒介の主なデメリットは以下となります。

・不動産会社の力量に左右されやすい
・囲い込みを受ける可能性がある
・途中解除する場合は違約金が発生することも

仲介業者は1社のみなので、その業者の力量に左右されてしまいます。

業者でも売買が得意、賃貸が得意というように得意分野があるので、しっかりと売買に慣れた業者を選ぶことが大事です。

専任媒介では囲い込みに注意する必要あり

専任媒介で警戒しなければならないのが囲い込みです。

他社から購入希望のお客さんを紹介されても、自社で探したお客さんをつけたいため断ってしまうことを囲い込みといいます。

せっかく紹介してくれるお客さんをなぜ断ってしまうのか?

理由は仲介手数料にあります。売買の場合だと仲介手数料は売主からと買主の両方から頂くことができます。

ただし他社から紹介されたお客さんが購入した場合、買主側の仲介手数料は紹介してくれた仲介業者に支払われることになります。

売主と買主の双方から仲介手数料をもらうため、他社からの紹介をすべて断ってしまうのです。

また囲い込みをする業者は、どうしても自社のお客さんで契約を決めたいため売主に無理な値引きや販売価格の引き下げを要求することが多く見受けられ、結果として売主も損をしてしまうことになります。

※イメージ図
出典:【専任媒介契約とは?】メリット・デメリットや一般媒介との違いを解説|すまいステップ

どんな物件を売るのに適しているのか?

専任媒介に向いているは築5年~築20年くらいの物件です。

マンションの中では一番人気があり、競合物件も多くなります。

このように人気はあるが競合も多い物件というのは、不動産会社の力量に左右されやすい傾向があります。

売買に優れている不動産会社を見つけることができたら、専任媒介でしっかりと宣伝活動してもらい早期売却を目指しましょう。

専属専任媒介のメリット・デメリット

専属専任媒介の主なメリットは以下です。

・積極的な営業活動が期待できる
・報告頻度が高いので営業戦略を立てやすい
・宣伝チラシなどは目立つ場所に掲載してもらえる

専属専任媒介は仲介業者にとって最も理想とする媒介契約です。

レインズへの登録義務や売主への活動報告については、専任媒介よりも期日が短く設定されており、これは売主にとって有利な内容なのですが、専任媒介と大きく違う点が1つあります。

それが「自分で買主を探すことができない」という点です。

専任媒介だと自分で買主を探した場合、仲介業者を通さずに売買契約をすることができるので、その場合は仲介手数料を支払う必要がありません。

ただし、こちらの専属専任媒介契約だと例え自分で買主を探したとしても、必ず仲介業者を通す決まりがあるので仲介手数料を支払うことになります。

それだけ業者に有利な条件が揃っている契約内容なので、広告チラシなどでも一番目立つ場所に掲載してもらえる可能性が高くなります。

売主にとっては、本気で売却活動に取り組んでもらえるという大きなメリットがある媒介契約です。

一方で、専属専任媒介の主なデメリットは以下となります。

・不動産会社の力量に左右されやすい
・囲い込みを受ける可能性がある
・途中解除する場合は違約金が発生することも

専属専任媒介で一番注意しなければならないのが、物件の囲い込みです。

業者側も費用をかけて宣伝活動をするので、どうしても自社で買主をつけたいという思いが強くなりがちなので、他社からの紹介などについては詳しく報告を受けるようにしましょう。

また、自分で探した買主であっても仲介手数料を業者側に支払ないといけませんし、契約期間内に解除する場合は違約金を請求される恐れもあるので、契約前にしっかりと確認しておきましょう。

使われることは少ない契約方法

専属専任媒介はどうしても業者寄りの内容になっているので売主側から敬遠されやすく、媒介契約の中では利用されることが少ない契約の種類です。

ただし、本当に頼れる仲介会社に出会ったのであれば、その業者に決め打ちする形で専属専任媒介契約にするのも有りだと思います。

どんな物件を売るのに適しているのか?

専属専任媒介に適しているのは築40年を超えるような築古マンション、もしくは物件が遠方にある場合です。

築40年を超えてくると、よほど立地が良かったり、フルリノベーションしているような物件しか買い手がつきにくくなります。

それでも買い手をみつけるためには、仲介業者にかなりプッシュしてもらう必要があり、そうなると業者側が一番理想とする専属専任媒介で依頼するのがベストだと思います。

また遠方に物件があると、密な連絡や相談をしながら販売戦略を立てる必要があるので、報告義務が一番細かく設定されている専属専任媒介が最も適した契約内容だと思います。

買主、借主から見た専任媒介物件の良し悪しは?

買主側や借主側が仲介業者と媒介契約を結ぶことはありませんが、媒介契約の内容を理解しておくことで、中古マンションや賃貸マンションをお得に購入(賃貸)することができるようになります。

ここでは買主、借主側からみた専任媒介物件について解説していきたいと思います。

一般媒介と専任媒介の違い

一般媒介となっている物件は、売主(貸主)が複数の仲介業者に売却や入居者募集の依頼をしていると考えられます。

A社とB社とC社に売却の依頼をしている場合、もしあなたがA社を通して物件の購入を検討していたとしてもB社やC社が先に買主を探してきて契約してしまう恐れがあります。

しかし、専任媒介契約であれば仲介業者は1社のみなので、あなたが購入を検討している間に他の仲介業者が先に買主をみつけて契約してしまうことはまずありません。

つまり希望の物件が専任媒介や専属専任媒介となっていれば、じっくり検討する時間があるということです。

専任媒介は仲介手数料を値切れる可能性あり

専任媒介の契約期間は最長3ヵ月となっています。

3ヵ月を過ぎると再契約するか、他の仲介業者に変更してしまうのが一般的です。

もし仲介業者が契約を急がせるようであれば、この専任媒介契約の期間が切れる間際なのかもしれません。

専任媒介契約といっても契約期間相に結果が出なければ、売主(貸主)から愛想をつかされ他の仲介業者に乗り換えられてしまう可能性があります。

もし他の仲介業者に乗り換えられてしまったら、その業者は1円の利益も得ることができません。

ですので、この専任媒介契約が切れる間際だと、仲介手数料を値引きしてでも契約をまとめたいという心理が仲介業者には働きます。

タイミングが良ければ交渉次第で仲介手数料を大幅に値引きしてもらえる可能性があります。

もし仲介業者側から「当社と売主との契約期限が迫っている」みたいな話をしてきた場合は、思い切って仲介手数料を半額くらいまで下げてもらう交渉をしてみるのも有りだと思います。

物件の値引き交渉には不利かも

物件の値引き交渉には専任媒介契約の物件は不向きです。

一般媒介契約であれば、何とか他社よりも先に契約をまとめたいので仲介業者も真剣に売主に交渉を持ち掛けてくれます。

しかし専任媒介契約であれば他社に先を越されることがないので、少しでも高く売れた方が仲介手数料も多くもらえるので、あまり値引き交渉には積極的ではありません。

例えば売値が200万円違うだけで、仲介業者が得る手数料は13万2000円も減ってしまうのです。

よくある質問

媒介契約に関して、今回紹介しきれなかった部分や、ネットなどで良く質問されている内容などをまとめてみました。

一般媒介の契約期間は?何社と同時に契約できるの?

一般媒介契約であれば同期間で何社と契約してもOKとなっています。

3社でも5社でも問題ありません。ただし、あまり多くなりすぎると内容の整理が大変になります。

このお客さんはどこの仲介業者から紹介してもらった方だったかな?というように、情報が混乱してしまう恐れがあります。

そこでお薦めなのが一般媒介契約だとしても、同時に売却依頼するのは3社までにしておくのが理想だと思います。

理由としては、先に言ったように多くなりすぎると情報が混乱すること、そして業者間のモチベーションを下げさせないためです。

同時に5社や10社に売却の依頼をしてしまうと、自社で契約できるチャンスが少ないと考える営業マンが普通です。

そう思わせないためにも同時に依頼するのは3社まで、可能であれば2社に絞っておくのが理想です。

一般媒介でレインズへ載せない業者に登録を要請することはできる?

一般媒介だとレインズへの登録義務はなく、あくまでも業者の任意となっています。

ですので、業者に対してレインズへの登録をお願いすることはできますが、必ずしも業者側がこれに応じるというものではありません。

多くの業者の場合は一般媒介でもレインズへ登録するのですが、物件の囲い込みなどを考えている業者はレインズへの登録を躊躇することもありますので、一般媒介契約を締結する前にしっかりと確認しておくのがベストです。

専任媒介、専属専任媒介の読み方は?

専任媒介(せんにんばいかい)、専属専任媒介(せんぞくせんにんばいかい)と読みます。

専任媒介から一般媒介契約へ変更することはできる?

専任媒介から一般媒介へ期間内に変更することは基本できません。

専任媒介の契約期間が満了するか、途中解除の手続きをして一般媒介に変更するというのが一般的なやり方になります。

専任媒介契約で売れない場合、解約はいつできる?

専任媒介契約の解除は、満期の時点で更新しないというやり方になります。

ですので、法律によって決められている契約期間の上限3ヵ月以内の満期日となるのが一般的です。

ただし、法律によって決められているのは3ヵ月以内ですので、最初の媒介契約を結ぶ時点で契約期間を1ヵ月や2ヵ月にしておくことも出来ます。

どうしても契約期間内に途中解除したいのであれば、仲介業者に相談して了解を得るしかありません。

この場合、業者によっては宣伝広告に掛った費用などを実費請求されるなど、違約金が発生することもあるので注意しましょう。

まとめ

今回解説したように、多くの人は一般媒介か専任媒介を選ぶことになると思います。

もっともバランスが取れているのは専任媒介ですが、売却する物件によってどれが適するかは変わってくるので、解説を読みながらじっくり検討してみてください。

また媒介契約は原則3ヶ月間となりますので、万が一売却活動が上手くいっていないと感じた場合は、一度契約を終了し、仕切り直すことも出来ます。

不動産の売却は、仲介業者の良し悪しに大きく影響されるので、もし不満を感じた場合は別の仲介業者を探すことをおすすめします。

もしまだ媒介契約を結ぶ前の段階でれば、1社だけではなく、最低でも3社程度から話を聞いて、どこに依頼するのか比較してみましょう。

目次
閉じる